【パンの真実】焼きたてパンは美味しくない

世の中のほとんどの人は、湯気が出たアツアツの焼きたてパンが最高に美味しいと思っています。

「焼きたて=美味しい」の図式です。

私が働いていたベーカリーでも「焼きたて」を謳っていました。それは、焼きたてをお客様が望むから、お客様が喜ぶから「焼きたてです~」と言って店頭に並べていました。すると飛ぶように売れていきます。

でも、本当はそのパン・・・・焼きたてではありませんから!

正確に言うと、冷めたて!!です。

焼きたてほやほやは美味しくない

さて、焼きたては果たして美味しいのでしょうか??

結論から言いますと、美味しくありません。そのパン本来の美味しさにはなっていない未完の状態です。

製パンでは揚げ物のパンを「ドーナツ」と言いますが、ドーナツは揚げたてが最高に美味しいです。カレーパンなどがそうです。それ以外のパンは、粗熱が取れた頃が本当の美味しさになります。

焼きたて直後のパンはなぜおいしくないのか?

焼きたて直後のパンは、内部にたくさんの水蒸気を含んでいます。まだ内部は水分で重い状態です。水分を抱えたクラムはペタペタ、ネチャネチャしています。そして柔らかいです。カットすると潰れてしまうのはそのためです。α化したデンプンがナイフにべっとりくっつきます。

時間を置くことで水蒸気が抜けていき、水蒸気とともに余分な発酵物質も抜けていきます。発酵物質とはアルコールや有機酸です。これらが抜けることでイースト臭さがなくなるのです。

余計な水分が抜けるとクラムは軽くなり、粗熱が取れると味を感じられるようになります。小麦の香りや味です。そうしてはじめて、そのパン本来の美味しさを感じることができるようになります。

テレビの食レポは単なるポーズ

窯出し直後のアツアツのパンをハフハフ食べるのは単なるポーズ。パフォーマンスです。

画面からもわかるように、窯出し直後のパンは素手で触れないほどの熱を持っています。そのパンを、アチアチと指先で転がし、無理やり割り裂き、湯気がモワモワと上り立つパンにかぶりつく。

「美味しい!やっぱり焼きたてパンは最高ですね!」とリポートするお決まりのスタイル。

美味しいわけがありません。口の中が火傷するほどの熱さを持ったパンです。食べたところで、まともに味すら感じることができません。ただひたすら熱いだけです。騙されないでくださいね。

粗熱を取る時間はパンにとって必要な時間です。大切にしてくださいね。

そして、ベーカリーで「焼きたてです~」と出されるパンは、窯出し直後のパンではありません。粗熱をとった一番美味しい食べ頃のパンです。タイミングを見計らってちゃんと出しているパンなのです。そうしないと、陳列している最中に、パンは押し潰されてしまいます。だから、ベーカリーでの焼きたては、安心してお買い求めいただけます。

そして、焼きたてより「美味しい食べ頃のパンです~」って店頭に出せば、もっと売れるのになぁと密かに思っています。