発酵にはどうして熟成が付いてくるの?

パン作りをしていると、発酵と熟成というワードを耳にします。

「なぜ発酵しようとすると、勝手に熟成がついてくるの?」「そもそも熟成ってなんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?

パン作りでは発酵と熟成はワンセットで、切り離すことができません。

なぜなら、「水と出会った瞬間に、それぞれのスイッチが同時に入ってしまうから」切り離すことができないのです。

「時間」という乗り合いバスに乗っている関係

パン作りにおける「発酵」と「熟成」は、「生地を寝かせている時間」という同じバスに乗っている同乗者のような関係です。

発酵は生地を膨らませるために、時間を必要とします。※温度だけでは発酵は進みません。

熟成は時間を置いている間に、生地の中で酵素が働き続ける時間になります。

つまり、「膨らむのを待っている時間(発酵)」が、そのまま酵素が働く「成分が分解されて美味しくなる時間(熟成)」になっているのです。これが発酵と熟成の関係です。

発酵と熟成は、パンだけでなく多くの食品で協力し合って美味しさを作っています。

パン以外で代表的な食品

どれも私たちの身近にある馴染みの深いものばかりです。

1. 味噌(みそ)

日本人にとって最も身近な発酵食品と言えば味噌があります。味噌は発酵と熟成の結晶です。仕込みから完成まで数ヶ月〜年単位かかるため、変化がわかりやすい食品です。

【発酵の仕事】(酵母菌・乳酸菌)

麹(こうじ)カビが作った糖分をエサに、酵母や乳酸菌が活動します。アルコールや微量の酸を作り出し、味噌らしい「香り」や「酸味」を生み出します。

【熟成の仕事】(酵素)

麹に含まれる酵素が、長期間かけて大豆のタンパク質を分解し続けます。これがアミノ酸(旨味成分)となり、味噌の深い「旨味」と「コク」になります。色がだんだん濃くなるのも熟成の証です。

2. チーズ(特にカマンベールやハードタイプ)

チーズも発酵食品の代表選手です。「ミルクが固まったもの(フレッシュチーズ)」が、時間とともに「味わい深いチーズ」に変わる過程がまさに熟成です。

【発酵の仕事】(乳酸菌)

ミルクに含まれる乳糖を乳酸菌が食べて、乳酸を作ります。ミルクを酸性にして固め(凝乳)、保存性を高めると同時に、ヨーグルトのような爽やかな風味のベースを作ります。

【熟成の仕事】(酵素・カビ)

チーズを倉庫で寝かせている間に、ミルク由来の酵素や、後から加えた白カビ・青カビなどが働きます。タンパク質や脂肪を分解し、カマンベールなら中がトロトロになったり、ハードチーズなら濃厚な風味や独特の香りが生まれたりします。

3. ワイン

ブドウジュースがアルコールに変わった後、さらに時間を置くことで価値が上がっていく飲み物です。年代物のワインはとても高額です。発酵と熟成がそれだけ価値のあるものを生み出すのです。すごいと思いませんか?(1000万のワイン、ロマネ・コンティは有名です。)

【発酵の仕事】(酵母菌)

ブドウの糖分を酵母が代謝して、「アルコール」と炭酸ガスに変えます。ここがジュースからお酒に変わる決定的な瞬間です。

【熟成の仕事】(時間と化学反応)

できたばかりの若いワインを、樽や瓶に入れて長期間寝かせます。ゆっくりと酸素に触れたり、成分同士が結合したりすることで、できたての荒々しい角が取れて「まろやか」になり、ブドウそのものにはなかった複雑な香りが生まれます。

おわり

発酵と熟成を使った食品は、パンだけでなく私たちの身の回りにたくさん存在します。そこには時間というファクターが存在すること。(他にも色々ありますよ)

パン作りでは「美味しいパンを作るなら時間をかけろ」と言われるのは、熟成を狙っているからです。美味しさは熟成することで乗ってくるのです。

熟成することで実際に何が起こっているのかは、理論の話になります。もっと深く学ぶことで理解できるようになりますよ。

今は、膨らむこと(発酵)と美味しくなることは必ずしもイコールではないことを理解し、熟成とはなにかをイメージできるようになりましょう。

そして、発酵には熟成がもれなく付いてくること。ここを押さえておきましょう。